年金保険の二重課税の還付
今朝、日経新聞を開いたら大きなスペースをとって、年金保険の二重課税
の還付に関する国税庁のお知らせが出ていました。
「最近耳にするけれど、年金保険の二重課税って何?」
という方に簡単にご説明しますと、
相続などで生命保険を受け取る際、その保険金は相続税の対象となります。
一時払いで全額受け取る形式の場合は、受け取り時には
税金はかかりません。
(相続税の対象となったものは所得税は課税されないのです。)
でも受け取り方式が年金形式(分割年払い)ですと、
受け取りの際に所得税が差し引かれてしまうのです。
これが、年金形式による生命保険金の二重課税といわれるものです。
どう考えてもおかしいのですが、何十年も続いてきた取り扱いに
税理士もいつしか感覚が麻痺してしまって、これはこういう風に
決まってるのだと説明してしまっていたのが実情でした。
これが今年の最高裁の判決によりがらっと取り扱いが変わりました。
税務にかかわる者たちは、驚きをもってこの判決を迎えましたが、
私自身も感慨深いものがありました。
今年の3月ごろ、以前勤務していた事務所の
年配のお客様がお子様方に財産を遺すために、年金保険に契約し、
その受け取りの権利をお子様方に贈与したのですが、
贈与したときにお子様方に贈与税がかかり、
さらにお子様方が年金を受け取るときにも、
所得税が引かれることに疑問をなげかけられました。
私は「現時点ではこういう取り扱いになってしまっているが、
現在最高裁で争っているので、もし納税者が勝訴すれば、
取り扱いも変わるかもしれません。」とご説明しました。
が、本当に変わるとは正直思ってませんでした。
あのときのお客様は、今ご自身の疑問を持つ感覚が、
正しかったことを感じていらっしゃると思います。
この裁判は、一人の女性が、亡くなった夫が遺してくれた
保険金を1円も無駄にしたくないという思いから、
訴訟に踏み切ったものです。
租税裁判は、納税者の勝訴率はとても低いので、
かかる労力と時間とお金のリスクを考えると
おかしいと思ってもなかなか訴訟に踏み切れるものではありません。
その女性の強い意志と、それから感覚が麻痺してしまった
税理士が多い中で、納税者の疑問を掬い取って、
補佐人として一緒に争った江崎税理士に
心から敬意を表します。
この裁判を受けて、
同様の保険契約で差し引かれた所得税は10年間分
還付されることが決まっています。
還付の対象となる方々は、
この裁判に携わった方々のご苦労に、ほんの少しでも
思いをはせていただければ幸いです。
この還付の手続きですが
時効内の平成17年分については、一番早い方の期限は
12月末までです。
年金保険を相続か贈与で受け取っている方で、
心当たりがある方は、お早めに保険会社に問い合わせてください。
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